A CLOCKWORK ORANGE 時計じかけのオレンジ

ストーリー

アナーキーな暴力にすがる若者、治療という名の暴力を正当化する政府、復讐心を隠しきれない被害者、本能である暴力で繋がる輪廻。

レビュー

キューブリックの映画を見るのは3作目。[アイズ ワイド シャット」は全然理解できなくて、「2001年宇宙の旅」で度肝を抜かれた。おそらく2001年・・・を見ていなかったらこの作品も理解できなかったことだろう。松本仁志の「大日本人」はおそらくこういう所を目指したのではないかと思われる。

さて本題だが、確かにインテリアやオブジェがキュートだったり近未来的な描写は野暮ったくはない。また、音楽のセンスも秀逸である。しかしながら、この映画が将来を予見している(現代に非常によく当て嵌まる)だとか、管理社会の危うさを表している...みたいな事には頷けない。
ここで語られるのは、あくまで人間が持つ暴力性をシニカルに捉え、これを白日の下に晒しているのだと思う。劇中には暴力を否定する人間は一人として現れない。結局は各人がその利益の為に力を行使するのだ。高尚なフリをしてみても、浅ましくも人はその本能として暴力を持つ、所詮そんなものなのだよ、というメッセージだ。キューブリックの映画の根底には、”輪廻”見たいな事があると思う。その媒介をするのがこの映画では”暴力”ということになる。そうしてみると最後の台詞「I was cured all right.」は意味深い。