浦和 0(2-4)0 F東京 (国立)
 現在日本で最も強いチーム浦和。何と3年連続してこのナビスコカップの決勝へと駒を進めている。そして、3年連続してニューヒーロー賞(坪井、田中達也、長谷部進)を輩出した。単にチームとして強くなったということに留まらないのかもしれない。浦和は99年に2部に降格している。この時を振り返り、あの天才磯貝(元G大阪)はフロントが甘いと、言っている。こうしたことは我々素人には見えてこない部分だが、さもありなん、とは考えさせられる。彼らは他のチームに比して非常に大きなアドバンテージがある。いわずもがな、それはあの素晴らしいファン達だ。過激であることが強調させるが、それだけではない。実に広い年齢層のサポーターを抱えている。J発足当初のミーハーなファンではなく、フーリガン的な輩ばかりではないのだ。この決勝戦でも7割はレッズサポだったという。彼らはヨーロッパのスタジアムをさえも超越したような、雰囲気を作り上げていた。本当に素晴らしいと思う。そうしたサポーターにも鍛えられたのかもしれない。チームが勝利するだけでなく、フロントも成長していると願ってやまない。
 一方のFC東京は、原監督がとてつもなく魅力的に思える。一時浦和でも指揮を執っていたが、この時はほんとにぱっとしなかった。スペイン的な攻撃サッサーを旗印に掲げ、見ていて楽しいサッカーを展開するようになった。選手達を健全な競争に放り込むことで、各個人の能力を引き出しているように見える。そもそもさほど選手層は厚いとは思えないのだが、個性が光る選手が多い。若手の台頭とベテランをうまく融合させるチームが、安定した成績を収めることが常だが、そう簡単ではない。しかし、それをうまくやっている。ベテランでは、もう34になる三浦は欠かせないし、この日ジャーンの退場で代わりに入った藤山は、完璧にCBをこなした。左SBの金沢も安定した守備を披露した。若手はまさに、どんどん出てくる感じだ。馬場や梶山など、何度も使ってもらえることで、どんどん成長している。競争をくり返し、個性を引き出し、そしてこの日みせたような闘争心や執念がどんどんチームを強くする好循環に入っている。PKの後、監督は自ら選手みたいに走り、はしゃぎ、涙を流した。監督のあけっぴろげで、あまりこだわらない(気がする)性格に選手達も巻き込まれているように思える。
 新しい時代の幕開けを思わせるようないい試合だった。フロントが成長していれば、浦和はひとつの時代を築くだろう。磐田や鹿島の強さに陰りが見えてきた一方でまた、この日10人になりながら勝利を納めたFC東京だけでなく、例えば市原のように、個性をもったチームが勝ちあがることで、日本のサッカーがますます面白くなっていくにちがいない。