イラン 2-1 日本 (テヘラン)
 日本のライバルというとまず韓国が浮かぶ。しかし現在、FIFAランキングでも18位と19位、対戦成績でも互角と、イランこそがアジアにおける本当のライバルと言えるかもしれない。会場のアザディ・スタジアムには人がまさに溢れ返っていた。以前磐田がアジアチャンピオンズカップで戦った時にもその迫力が伝えられたが、なかなか壮観ではあった。現地人女性は入場できないと言うが、そもそも10万人は入る所に、自由席として詰め込まれた男たちの群れ群れ群れである。
 戦前の注目点としては、はたして11ヶ月ぶりの代表復帰の中田が、個人のパフォーマンスとしてもシステム的にも、どこまでフィットするか、がポイントの一つだった。カバーリングに関し福西と意見交換があっただけで、すわ内乱かと騒ぎ立てたマスコミにもうんざりだが、個々人の技術レベルが向上し、さらに戦術的にもかなり固まってきている中に、中田と言う才能は輝ける場所を得られるのか、は興味深い点だ。もう一点は、両サイド、特に左サイドの三浦だ。能力的には申し分ないが、代表ではサントスという壁に阻まれ、代表に出ているうちに前クラブでは相馬という若き才能に弾きだされてしまうというジレンマは、ここでその鬱憤をはらせるだろうか?中沢や福西などのように結果をコツコツと積み重ねていれば、スタメンにも必ず上がれるはずである。
 試合内容としては非常に白熱した、見ていて楽しいものだった。両チームとも、お互いに攻め合い、お互いにいい面も悪い面も出ていたと思う。サッカー大国であるブラジルはドリブルを楽しむ。それはあたかも喜びや楽しさに満ち溢れているように写る。footballという競技の原点でもあるのだ。中東勢は比較的ドリブル好きだが、ザンディ、カリミ、マハダビキア、カエビらはドリブルがうまい。試合展開によっては足枷となるが、この日は有効に作用していたと思う。対する日本は、前半は粘っこく丁寧に対応していたが、後半に入ると前がかったことでその対応が少しルーズになってしまった感がある。日本の攻撃は、中田や中村を基点にサイドを使う、といった意図は見て取れた。しかし対するイラン守備陣も高さと早い寄せで忠実に対応し、日本を自由にはさせなかった。特にサイドからのクロスはほとんど一本もあげさせなかった。中田はディフェンスこそトップフォームと言えないものの、攻撃時には何度か危険なパスを展開した。イランの守りがよく、スペースを与えてもらえなかったので、活躍とまではいえないが次第点だろう。三浦は三都主にとって代わる所まで評価されないかもしれないが、バックアップとしては充分な働きだった。心配は右サイドのバックアップだろう。試合のアヤとしては、同点後の試合運びだった。イランはカウンターに徹したのに対し日本は攻めた。しかしこれはどちらが正しかったということではない。結果論として、イランが勝ったというだけのことだ。
 ジーコはこの試合をひとつの山だとしていた。高い決意で望んだにもかかわらず、勝ち点を奪えなかった。この日の敗戦は、戦術うんぬんでなく、単に勝ち点を失った以上の意味を持たないともいえない。予選突破の目標を達成するために、今後ジーコが、どうやってこの超えられなかった山を克服するのか、が問題であり、興味のあるところである。