2004
Aug
08
Japan 3-1 中国 (北京)
 前回のレバノンに続き、日本がアジアチャンピオンの座に着いた。アウェーでの勝利、そんなフレーズがぴったりくる大会であった。ホストカントリーとの対戦ではなくとも常にブーイングを浴び、蒸し暑い重慶、荒れたピッチの済南、移動、試合間隔の少なさ、判定の不自然さなどなど、そんな困難な状況をことごとく跳ね返した。ジーコにとっては辛い出発であったに違いない。8人をセレクション出来なかった、と語るように、メンバーは充分でなかったはずだ。しかし、大会前から決してそのような不満は表すことがなかった。さらに彼は常にメンバー一人一人に声を掛けたという。勝ち進むにつれ選手たちから、「チームがまとまっている」「一丸となってきてた」との声が聞こえるようになる。これは、チームマネージメントが成功したことを意味する。このことは優勝した一因として評価されるべきではないだろうか。
 中国というチームのこれまでの戦いぶりをみていて、まだ日本には追いついていない印象をもっていた。確かにフィジカルは強く、ボール扱いもうまい、戦術的にも洗練されてきてはいる。しかし、クリエイティビティーという側面から見ると、いささか物足りない。オマーンの躍進を脅威と見る声がある一方で、彼らにはゴール前での正確性と共にそこにいたる創造性が、決定的に不足している。同じ事がこの中国にもいえる。サイドからの崩しと強烈なロングシュート、という形あるもののこれらは相手のプレシャーが弱い時にしか発揮されていないものだった。MVPは中沢だと思っていたので驚いたが、日本には中村がいる。そして彼はジーコから自由をあたえられているのである。中盤の想像力という点でいば、イランや韓国に一日の長があるだろう。
 試合のほうは、高い守備ラインの裏を狙う日本と、3バックのサイドを突く中国の攻防という展開だった。今大会安定している日本の守備陣は中国のサイド攻撃をうまく封じ込めた。そしてこれまた脅威というレベルにまで引上げたセットプレーから得点をし、ホストカントリーを打ち破った。2点目は神の手にも見えるが、3点目の玉田の抜け出しはまさに”はまった”ものであった。全体的には力の差は歴然であったのだ。
 これで日本はドイツWcup前のコンフェデレーションズカップに参戦する事ができる。予選を勝ち抜くことは困難だが、もし突破できれば、コンフェデは格好のトレーニングになる。このメンバーから何人がWcupに行けるかわからないが、今回の優勝はまさに未来に繋がるものであったといえるだろう。万難を排し最高の結果を残した監督と選手に敬意と感謝を。そして本当におつかれさま。

2004
Aug
03
Japan 4-3 バーレーン (済南)
 今度は台湾問題だそうだ。ほとほとあきれてしまうが、ジーコはこういっていた、ブーイングでも勝てるんだからいくらでも騒げばいい、勝って黙らせると。なんと強気な事か、たのもしいではないか。そしてこの試合はまさに選手たちそのものが大変頼もしく見えた。ヨーロッパとアジアの違いはいろいろあるが、今大会を見て感じたのは、レフリーの質、という問題である。Jリーグも含め、アジアの大会でのレフリィングレベルのなんと低い事か。首を傾げたくなるような判定だけでなく、審判が主役になってしまう試合がとても多く感じる。これは選手達のプレーレベルに起因するのだろうか?それともアジアの審判たちのトレーニングや判定基準に問題があるのだろうか?この試合でも遠藤がレッドカードを貰い、前半38分以降延長終了まで日本は10人での戦いとなった。
 これまでで一番安定した立ち上がりだった。選手間の距離もよく、玉田、鈴木のスペースへの動き出しは早かった、また三都主も積極的に高い位置を保っていた。必然的にボールもよく動き、先制はされたものの、得点の匂いは充満していた。そんな矢先の退場である。ジーコはここから4バックに変更する。選手たちは柔軟に対応し、スムーズなシステム変更が図られた。後半に入りさらに小笠原が投入され、中村に加え2つの基点をつくり厚い攻めを構築すると、早々に同点、すぐに逆転と地力の差を見せ付けた。攻めていても得点が奪えず負けていくパターンに嵌ってしまう前に同点にできたので、安心していたら、ミスが重なりまた同点にされてしまう。日本人は逃げ切りというメンタリティは持っていないのかもしれない。そしてなんと後半40分に逆転ゴールを許してしまう。このあたりは、試合のマネージメントを完全に見誤ってしまった。どう時間を使うのか、攻めるのか守るのか、意識が統一されていなかった。後半40分でリードされる展開。クウォーターファイナルで見せた粘りは残っているのか、いないのか。それにしても、試合内容からいって負ける相手ではないはずだし、負けても実感が持てない。結果的には驚異的な執念で同点にし、延長で試合を決めた。最後まであきらめない・・・言葉にするのは簡単だが、容易な事ではない。今大会の最大の収穫は、優勝するしないにかかわらず、こうしたあきらめない事が逆転勝利に繋がると言う成功体験を積めた事ではないだろうか。

2004
Jul
31
日本 1(4-3)1 ヨルダン (重慶)
 概ね、戦前の論調はベスト4が最低とされていた。あわや敗戦というところまでいったが、なんとかノルマを達成した。前日にバーレーンがウズベキスタンに勝っていたが、延長を戦い最後はかなり疲労の色が濃かっただけに、休みの少ない日本としては90分で決着を付けたいところではあった。しかしながら、簡単に何かを成し遂げられる事はない。こういったラッキーな面がどこかに必要とされる。その意味では、二度目のラッキーは無いと思わなくてはならない。
 ヨルダンの日本対策(もうかなりオープンではあるが)は、徹底していた。ボールへの早い寄せ、サイドで基点を作る、簡単にパスを繋ぐ、どのチームも日本の弱点をついてくる。しかし日本も最終ラインは安定しており、失点の場面以外、崩されるところまではいかない。一方、攻撃面は単調で、各個人のスキルに頼ったものでしかなかった。やはりサイドが高い位置まで押し上げていけないと、厚い攻撃にはならない。三都主の出来の悪さにはうんざりだった。試合はこう着状態が続き、避けたかった延長そしてPKへと移っていった。中村、三都主がはずし、絶体絶命のピンチ、しかも足場が悪いとの判断からゴールが変更になった。この場面で一番気持ちの切替が難しかったであろう川口は、非常に集中していた。その後2本のPKを止め、逆転で勝利を納めた。
 韓国はイランに3-4で敗れた。イランの攻撃陣は魅力的ではあるが、そのベースになっているのは、各個人がドリブル(キープ)ができることである。トルシエはかつて、一人が5秒ボールを持てないといけないのに日本人にはそれができないと嘆いた。このボールキープの能力をもう少し身に着けないと、早い寄せに対して対応できない。もう一点は、サイドに作られる基点に対する処理。サイドMFとセントラルMFで潰してしまえばいいと思うが、守備的MFがどうしてもつり出され、結果バイタルエリアを自由に使われてしまう。中村の守備能力は非常に低いし、両サイドMFは縦へ抜けられるのを怖がってしまう悪循環。このあたりが改善できればもう少し安定した試合運びになるだろう。

2004
Jul
28
Japan 0-0 イラン (重慶)
 FIFAランキング21位のイランに対し24位の日本は、心理的には比較的楽に試合に入っていけた。既に決勝トーナメント進出を決めており、次の対戦が韓国かヨルダンかを決められる立場にいた。AFCのウェブサイトで、biggest surprises のpoll が1位のヨルダンは、40位。一方Wcup4位の韓国は20位である。引き続き移動無く重慶で試合を行えるということからも、引分け以上で予選1位を確保したいところである。
 DFラインに出場停止が重なっていたイランはしかし、バックアップのメンバーや交代で入った選手達の質が高かった。動きは少ないがダエイは存在感があるし、マハダビキアはとても危険な選手だ。そして中心選手にカリミがいる。このカリミを止められるかどうかがひとつのポイントだった。日本の司令塔中村にはマンマークで潰しに掛かってきたのに対し、カリミには福西を中心にゾーンで受け渡していた。守備はうまく機能し、中村も何も出来なかったが、カリミにも自由にさせなかった。日本の左サイドの三都主もこの日は敵陣深くまで攻め上がりを見せていた。この事はイランの右サイドのマハダビキアからの攻撃を押さえ込むことにもなった。後半に入り17番に攻められたが、最終ラインはよく集中していたと思う。両チームとも本当に決定的という場面はなく、最後は時間稼ぎのボール回しで両チームとも決勝トーナメント進出を決めた。
 現在若返りを図っている途上とはいえ、やはりイランである。このイランから2点を先制し、あわや勝利を納めるところまで追い詰めたオマーン(58位)の躍進は、もし決勝トーナメントまで上がってきていれば、biggest surprises を見せたかもしれない。10/13のWcup予選を心配する声が多いが、現時点では日本を破るまでの力は無いと思う。若年層の強化、国際大会での実績、若い選手達の経験値、そしてマチャラという頭脳。全ては良い方向へ向かってはいるが、そう簡単でもない。日本も昔は弱かった。力をつけたのはほんの10年のことである。そんな日本が自国開催というアドバンテージの中、Wcupでベスト8まで行けなっかたことと同じだと思う。一方で、ジーコが言うように、ランキングの上下だけで、勝敗を予想する事など不毛に等しい。日本よりランキングが上でアジアカップ優勝3回のサウジアラビアのグループリーグ敗退など誰も予想できはしなかっただろう。
 いずれにしてもベスト8が出揃った。日本は比較的楽な組み合わせの枝に入る事が出来た。このまま決勝まで駆け上がってくれる事を期待する。