フランス 0-1 ギリシャ
 一時代を築いたスーパースターの終焉。巧みなボール捌きと夢のようなスルーパスで人々を魅了した彼は、大会前、代表はこれが最後だろうと語っていた。それでもパスを受けるちょっとした動きやスペースを作り出す能力はいささかも衰えてはいなかった。しかし・・・前回優勝国のフランス、ジダンのフランスは敗れ去った。
 堅い守りとシンプルなボール回し、そして清清しいまでのボールへの執着、フットボールとはゴールを奪うこと、そんな基本的なメンタリティがしっかりと生きづいるチーム、ギリシャ。目だったスターはおらず、一番の注目は監督のレーハーゲルである。しかしそのレーハーゲルに規律と闘争心を植えつけられたギリシャは、得点後も逃げることなく、終始ラインを押し上げていた。フランスの攻撃陣に対しほぼマンツーマンで付き、スペースを消し、虎視眈々とカウンターを狙っていたギリシャはプラン通りに試合を進めていた。しかし後半の半ば辺りから少し疲れが見え、ファールを犯し始め、前半ほとんど打たれなかったシュートを打たれ始めた。ここが分岐点だった。ピレスの左サイドから盛んに攻撃を仕掛けられ、崩され始めていた時、右のMFを一人投入し、その勢いを瞬間的に止めたギリシャは、その4分後に得点した。しかし、レーハーゲルの指示は、下がるな!というものだった。意見の分かれるところではあるが、終了間際に、カウンターから(この試合最初で最後のフランスのカウンターだった)アンリの放ったヘディング(フランスにとってこの日一番のチャンス)が枠に行っていれば、彼の指示は非難の的になっただろう。しかしながらそうしたチャレンジ精神、そうしたメンタリティそれこそが、このチームの強さの源泉なのだと思う。因みに得点したチャリステアスは今期ブンデスリーガを獲ったベルダーブレーメンのFWである。
 一方のフランスは、この日はアンリに決定力が無かった。また、得点された後、サハとビルトールの投入で右サイドが活性化されたのを見ると、あの分岐点の前に交代をするべきだっただろう。明らかに攻撃が左に偏っていた。あれだけ守られ、あれだけスペースのない場合、やはり両サイドが使えないとゴール前は空いてこないだろう。いづれにしても、一人の偉大なフットボーラーの勇姿がこれで見納めと思うと、寂しい気もする。