2005
Feb
09
Posted by: iichii
日本 2-1 北朝鮮 (埼玉)
 肉を切らせて骨をたつと言うような表現の使われる2次予選。その初戦になんとか勝利を納めた。思えば8年前のあの日、カズと日本はいっぱい点を取って勝った。あれから世界が驚くような進歩を遂げ続けている日本サッカー界。それは選手個々人の能力の向上だけでなく、組織も設備も教育もサポーターも全てにおいて前進してきたはずである(相変わらずなのは、マスコミだけだ)。それは今日からの戦いが証明してくれることになる。この予選を通過してほしいと願ってやまない。
 この試合に先立ち、ジーコは小笠原を先発させると明言した。緊張すると言われる初戦には、慣れた3バックで望みたいとすると、現時点であのポジションにはミツオしかいないのである。中田は未だ調子が上がっていないし、中村も超ハードスケジュールだ。中村が先発でないことが驚きをもって迎えられたが、ジーコには彼しかいなかった。本人もやる気を見せただけでなく、カザフスタン、シリア戦で好調であることを見せつけた。この2試合に一番安堵したのはジーコであったと思う。そして後半からの中村投入、4バックという方程式が描けたのではないだろうか。
 それにしても、何故いつも最後の最後までハラハラさせてくれるのだろう。どんなに悪く見積もっても、日本のほうが地力は上であった。決定的なチャンスも日本のほうが多く作れている。しかし、簡単にはいかない。トータルで星勘定した場合、ここは決して同点では駄目だ、などというようなことでもない。今シーズンのインテルが引分けが異常に多いように、最後にならないと試合が決まらないというのは、何かチームが持つ因縁のようなものだろうか。もうひとつは、日替わりヒーローのようにFWが点をとることも特徴だ。言い換えれば、絶対的なFWがいないともいえる。両者とも、共に結果として残っている以上、これを問題視することも少し難しい。とすれば、ジーコの言う、「好調な選手を使う」は正解なのだろうか?それともだからこそ、このようなチームなのだろうか?
 北朝鮮が意外にパスを繋ぐ丁寧なサッカーだったことには驚いた。そして、監督の早めの決断により試合を能動的にコントロールしようという姿勢も楽しかった。事実、3トップのような形をとることで、日本の3バックは混乱し、失点までした。もう少し早めに4バックにしてもよかったかもしれない。そして、4バックであると、俊輔が生き、強烈なアクセントになった。北朝鮮の足が止まったこともあり、いつ点が入ってもおかしくないという情況を作り、ロスタイムに大黒が決めて、念願の勝ち点3を手に入れた。次節はアウェーでイラン。誰がヒーローになるだろうか?

2004
Dec
13
ポルト0(8-7)0オンセ・カルダス (横浜国際 TOYOTA CUP)
 TOYOTA CUP が幕を閉じた。南米12勝欧州12勝で迎えた最終戦は欧州に軍杯が挙がった。サッカー不毛の地日本で、本物を直に感じられるのはめったに無い機会であった。四半世紀という時間の中でしかし、枯れ芝は世界に誇れるほどの緑に変わり、客席から試合を盛り上げるホーンが消え、国内リーグが成功し、思いもしなかったワールドカップもやってきた。衛星放送の恩恵をうけ、今やここ日本ほど世界のサッカーを楽しめる場所は無いという。なにより代わったのは、このインターコンチネンタルよりも、直前に行われたチャンピオンシップ等のほうがチケットは売れたという事実である。サッカーという文化が成熟してきたのだろうか。個人的にはこの大会が無くなってしまうことに寂しさを覚える一方で、関係者達に共通の認識として、その役割を終えた、との声が聞こえるのには、なるほどとはうなずかづにはいられない。それはともかく、この大会をプロモートしてくれた方々にはこころよりの感謝と尊敬をしたい。歴史に興味があればこちらは必見 -スポナビ- 。
 試合のほうは、圧倒的な攻撃を繰り広げるポルトに対し必殺のカウンターを仕掛けるオンセ・カルダス。ここ数年のまさにトヨタカップそのもの。前半全く攻めることが出来なかったオンセ・カルダスだが、後半は盛り返し、試合を盛り上げた。その一番の要因は、ポルトの右サイド、セイタリディスを封じたことにあったと見る。前半、オンセ・カルダスのソトにその主導権をにぎらられたがために、セイタリディスは全く機能しなかった。逆に前半の終わりから後半にかけてオンセ・カルダスの右サイド、ビアファーラが散々攻めあがった。つまりはボールは支配されてもサイドは完全に掌握していたのだ。ここに、モントージャ監督の手腕を見たように思う。確かにGKエナオは素晴らしかった。ポストやバーに乾いた衝撃音が何度も響いたが、あれは、エナオが素晴らしかったからでもある。ほんの少し、必ず触ってボールの軌道を変えていた。PK戦においても同じように反応しながら敗れ去ったのは皮肉としか言いようが無い。個人で言えば、PKを決めることができなかったファブロも素晴らしかった。ボカの2軍にいたという彼は、広い視野と巧みなボール捌き、体の使い方のうまさ、トップ下のプレーヤーとしてその才能を存分に見せたと思う。スタイルはリケルメに非常に似ている。前評判の高かったジエゴよりは格段に良かった。逆にポルトでは、ルイス・ファビアーノの出来が良かったとは思うが途中で交代させられてしまった。全体としては地味ではあった。両チームとも守りは堅く、かといってどこかの代表チームみたいにづるづる引きすぎる事も無く、守備面でも果敢に勝負していていたと思う。この辺りの守備の組織というかコントロールは見習うべきではなかろうか。
 得点は入らなかったが、個々のプレーヤーの質や局面の勝負は見所があった。大会の最後にふさわしいかどうかは別にして、やはりこういった試合を見られなくなるのは寂しい。今後は真のインターコンチネンタルとなるということだが、果たしてうまくいきますかどうか?

2004
Nov
17
Japan1-0シンガポール (埼玉)
 インドに快勝し2次予選進出を決めた後、ジーコは、カズやゴンなどのこれまでに貢献してきた選手達を代表に召集したいとしていた。しかしながら、各クラブの反対、これまでサブだった選手達からの反発、AFCからの干渉などがあり、その案は実現しなかった。はたしてどこまで本気の発言だったのだろう。前回のシンガポールとの対戦では、1次予選中唯一の失点を喫し、ぎりぎり2-1で勝ってはいる。これまでも、マスコミからの浅知恵な相手をなめた発言に対し、簡単な試合などひとつもないとたしなめてきた。しかしながら、このシンガポール戦に関しては、「失礼ながら、相手ではない」という旨の発言をしている。このようなリスペクトを欠いた態度は驚きではあった。あくまで擁護的な立場で言わせて貰えば、これらがサブの選手達のモチベーションを一気に押し上げる為の作戦だった?とは考えすぎだろうか。
 試合のほうは、前半の早い段階で玉田のミラクル(あたりそこね)シュートが決まり、そのまま試合終了の笛を聴いた。モチベーションが上がりまくりのサブの選手達がどこまで光るプレーをみせられるか、が焦点の中で、いくつかの発見があった。まず、試合を通じて松田が素晴らしかった。冷静な判断とたびたびの攻め上がりは大いなるオプションとなった。中田浩二の展開力にも目を見張るものがあった。スペインへ移籍の決まった大久保もまた、今回もオフサイドとされてしまい代表初ゴールはならなかったものの、堂々たるものだった。そして、三浦である。ジーコがヨーロッパでもあまりみられないと唸るフリーキックだけでなく、サイドのスペシャリストとしての能力の片鱗を見せたと思う。ややディフェンスに難があるようにも見受けられるが、三都主と遜色はないだろう。もう少し敵陣深くまで切り込めれば、間違いなく三浦を選びたい。試合結果としては1-0だったこともあり、満足できないと思う向きが多いのだろうが、シンガポールはそんなに弱いチームではない。得点されるまではうまく日本を捕まえきれない場面もあったが、そこからはあまり日本を自由にしなかった。そして幾度か鋭いカウンターも見せた。現時点で彼らは日本には勝てないだろう、しかし脅かす事はできるのである。なんとか勝利を得た今日の結果は、何事にかけても勝つことの重要性を知っているジーコの壮大な作戦だったのではなかろうか。
 今日のもうひとつの目玉は、はたして中国が2次予選進出がなるか?である。クウェートと同じ勝ち点で得失点差で2点負けている。大量得点差で勝たなければ、クウェートはマレーシア(同組最下位)をホームに迎えるだけに、進出は難しい。この日までに2次予選進出をきめられると思っていた中国は、このような状況にイタリアとの親善試合をキャンセルしている。もし中国が逆転ということになれば、国際的に試合の買収などと囁かれることだろう・・・なんと、中国7-0、クウェート6-1!!どうなるのだ???結局、勝ち点、得失点差では同点ながら、総得点で上回るクウェートが進出決定。

2004
Nov
04
浦和 0(2-4)0 F東京 (国立)
 現在日本で最も強いチーム浦和。何と3年連続してこのナビスコカップの決勝へと駒を進めている。そして、3年連続してニューヒーロー賞(坪井、田中達也、長谷部進)を輩出した。単にチームとして強くなったということに留まらないのかもしれない。浦和は99年に2部に降格している。この時を振り返り、あの天才磯貝(元G大阪)はフロントが甘いと、言っている。こうしたことは我々素人には見えてこない部分だが、さもありなん、とは考えさせられる。彼らは他のチームに比して非常に大きなアドバンテージがある。いわずもがな、それはあの素晴らしいファン達だ。過激であることが強調させるが、それだけではない。実に広い年齢層のサポーターを抱えている。J発足当初のミーハーなファンではなく、フーリガン的な輩ばかりではないのだ。この決勝戦でも7割はレッズサポだったという。彼らはヨーロッパのスタジアムをさえも超越したような、雰囲気を作り上げていた。本当に素晴らしいと思う。そうしたサポーターにも鍛えられたのかもしれない。チームが勝利するだけでなく、フロントも成長していると願ってやまない。
 一方のFC東京は、原監督がとてつもなく魅力的に思える。一時浦和でも指揮を執っていたが、この時はほんとにぱっとしなかった。スペイン的な攻撃サッサーを旗印に掲げ、見ていて楽しいサッカーを展開するようになった。選手達を健全な競争に放り込むことで、各個人の能力を引き出しているように見える。そもそもさほど選手層は厚いとは思えないのだが、個性が光る選手が多い。若手の台頭とベテランをうまく融合させるチームが、安定した成績を収めることが常だが、そう簡単ではない。しかし、それをうまくやっている。ベテランでは、もう34になる三浦は欠かせないし、この日ジャーンの退場で代わりに入った藤山は、完璧にCBをこなした。左SBの金沢も安定した守備を披露した。若手はまさに、どんどん出てくる感じだ。馬場や梶山など、何度も使ってもらえることで、どんどん成長している。競争をくり返し、個性を引き出し、そしてこの日みせたような闘争心や執念がどんどんチームを強くする好循環に入っている。PKの後、監督は自ら選手みたいに走り、はしゃぎ、涙を流した。監督のあけっぴろげで、あまりこだわらない(気がする)性格に選手達も巻き込まれているように思える。
 新しい時代の幕開けを思わせるようないい試合だった。フロントが成長していれば、浦和はひとつの時代を築くだろう。磐田や鹿島の強さに陰りが見えてきた一方でまた、この日10人になりながら勝利を納めたFC東京だけでなく、例えば市原のように、個性をもったチームが勝ちあがることで、日本のサッカーがますます面白くなっていくにちがいない。

2004
Oct
14
オマーン 0-1 Japan (マスカット)
 勝つか引分けで2次予選進出が決まる日本と、日本を倒せば2次予選進出が見えてくるオマーン。このワールドカップ予選だけでなく、先日のアジアカップでも対戦があり、いずれも日本が勝っている。知将マチャラに率いられるオマーンは、若い選手が多く”若手の大会で”国際経験を積んできている。一方日本は、アジアカップでの激闘で逞しさとともに落ち着いた試合運びが出来るようになってきている。よく言われた、コミニケーション不足など今は見る影も無い。
 戦前マスコミが囃し立てた「日本危機」説は、やはりマスコミのものでしかなかった。前半こそホームの声援に押され、勢いに任せて攻め込んできたものの、日本守備陣はこれをうまくあしらう事ができた。いくつか危ないシーンは作られたが、決して充分な形でシュートを打たれる事はなかった。攻撃に関しても、ボールを収めようと鈴木はがんばっていたし、高原は何度も動きなおしてスペースを探していた。2、3列目からのFWを追い越す動きも見られ、なかなかいいムードだった。問題があったとすれば、DFラインが深い、ということにも原因はあるのだが、中盤のバランスだろうか。後半に入ると修正がされたが、小野が前に掛かりすぎることで、日本の左サイドがスカスカになっていた。小野、中村、福西で作る中盤があまりシンクロしていない様子ではあった。後半早々に日本が先制する。中村のセンタリングと鈴木のヘディングは迫力満点だったが、高原のニアへの勝負が得点に繋がったといっていい。久々に試合を通じて見せた高原の好調さを物語っていた場面だった。オマーンも必死に攻めては来るが、試合の終盤には足が止まる選手も多く、クロスも中沢のヘディングにことごとく跳ね返されていた。やはり、まだまだ最終局面での強さが足りない。激しいプレッシャーの中でのクロスやシュートの精度が強豪と言われるチームのレベルには達していないと言わざるを得ない。
 こうして日本はあと1試合を残して、2次予選への進出を決めた。既にサウジアラビア、ウズベキスタン、北朝鮮の進出も決定しており、やはりアジアの強豪たちが勝ち上がってくるだろう。チームは出来上がりつつあるようにも見えるし、アジアチャンピオンでもあるが、ワールドカップへの切符を持っているわけではない。2次予選でも勝てなければ全く意味が無い。今後どんなドラマが待っていて、どんな人材が頭角してくるか楽しみである。